犯罪捜査の推理力
最近は手軽に海外のテレビドラマが視聴できます。月々1000円程度でオンライン上の映画やドラマが見放題という「レンタルビデオ」業態を一気に脅かすようなサービスです。
そんな、アメリカのテレビドラマの多くはFBIやCIA、科学捜査班を扱ったものが結構あります。主人公は現場に残された情報や聞き込みから、犯人像を割り出していきます。
ちょっとしたことから、犯人の心理や職業まで割り出したりして驚きます。この犯罪者を推理することを「プロファイリング」と呼びます。語源は、「プロフィールから推理する」から来ているようです。
プロファイリングとは推理力
このプロファイリングが実は営業でも大いに活用できます。営業相手の限られた情報を集め、営業相手が何に関心を持っているか、どういったことを考えているかを事前に推測することで営業を効果的に進めることができます。
3流の営業マンは、見込み客との面談にプレゼン資料のみで臨みます。2流の営業マンは、一応見込み客の期待に応えようとヒアリングすべき内容を準備して臨みます。そして、1流の営業マンは、面談に望む前に見込み客をプロファイリングして面談をシミュレートします。
営業におけるプロファイリングとは、「特定の限られた情報を基にして、会ったことも無い見込み客がどんな相手なのかを推理すること」です。アメリカテレビドラマの主人公のように、断片的な情報から推理力を働かせ、答えに近づくことです。
敵を知れば百戦危うからず
営業をする上で、見込み客がどういった相手で、何を考えているかを分かっていれば、その営業が上手くいくのは当然です。それが分かっているにも関わらず、多くの営業マンは初回面談の前に情報を集めていないように思います。そして、事前に見込み客の情報を集めるごく稀な営業マンも、その情報を正しく活用できていないことが多いようです。
営業の相手は、何を重視するのか、どういった立場で判断するのか、関心事は何かなど事前に把握して営業で最も大事な初回面談に臨みましょう。以下では、営業の場合、見込み客をどうプロファイリングするのかを例を上げて見ていきます。
プロファイリングの方法「会社の情報から推理する」
営業面談の多くの場合は、社長や取締役が面談の相手の場合も多いと思いますが、個人に焦点を当てる前に会社情報から何が読み取れるでしょうか。
①会社基本情報
社員数、売上、所在地、支店など。その企業の購買力が想定できます。社員が3人の会社と100人の会社では毎月動くお金の量が異なります。同じ100万円でも社員100人の会社の方が購買力があるのはイメージしやすいかと思います。拠点がある場合も同様です。拠点を維持するにはお金がかかります。やはり拠点が多い方が、毎月扱ってるお金の量が多いと考えることができます。
②設立年数
10年以内の若い会社は、創業者が社長の場合が多く意思決定も社長一人で行うケースが多いように感じます。逆に歴史のある会社は、息子さんが社長でやっているが、実はお父さんが会長で未だ意思決定権を持っているというケースも少なくありません。また歴史のある会社は、守りが強い、つまり保守的な判断をする企業も多いように思います。
一方、資金調達力を考えると創業間もない企業は融資枠も少なく、自由に使えるキャッシュが少ないケースもあります。
③商品
営業先の企業は、どんな商品を扱っているでしょうか。仮に精密機械を扱っている企業場合は、数値比較により取引先を決めるかもしれませんし、食品会社であれば安全性を重視するかもしれません。
その商品の利益率や単価によっても経営者の性質は変わってきます。単価が小さく、部品メーカーや飲食店など利益率・単価が低い商品を扱っている企業はコストに厳しい印象があります。住宅や不動産屋さんのように利益率が高く、単価の高い商品を扱っている企業は比較的サイフはゆるい気もします。
④採用
新卒を積極的に採用している企業は、長期的な投資を理解している企業でしょう。採用自体をしていない企業は、成長性が低い企業の可能性があります。
プロファイリングの方法「社長の個人名から情報を集める」
最近では、検索エンジンがあるので多くの場合、見込み客企業の社長の名前を検索すると多くの情報を得ることができます。
①所属グループ
商工会議所、ロータリー、ライオンズクラブから地域の自治体、業界団体などなど多く名を連ねている人もいれば、全く所属していない人もいます。多く所属している人は、社交的でお酒をよく飲む方も多いでしょう。事業が安定していないと所属団体のイベントに参加する時間が取れないので多くの団体に所属している経営者の事業は安定している可能性があります。倫理法人会やPHP、稲盛和夫の盛和塾などは勉強熱心で真面目な経営者が多いといえるでしょう。
②生い立ち・考え方
やはりネットで面談相手の名前を検索すると、ホームページに記載された社長挨拶、過去のインタビュー記事なのでその経営者の生い立ちや考え方を知ることができます。大変な苦労をされた方はやはり腹が座っているでしょうし、2代目の息子さんであれば新しい考え方を取り入れたり、柔軟な考えを持っているかもしれません。ネクタイやスーツを見てもトラディショナル(伝統的・保守)かそうでないかも推測できます。
プロファイリングの方法「事務所や社長室から情報を集める」
①職員の教育
営業面談をするためにその企業に訪問すると、またそこで多くの情報を得ることができます。
玄関の前に水撒きがされてれば、きちんとしている会社と分かりますし、受付の対応でもその会社の教育の徹底度が分かります。事務所内の職員の多くが挨拶をしてくれる企業もありますし、ロクな教育もできていない会社のあります。言うまでもありませんが、社員教育がしっかりしている企業の方が、こちらの話を聞いてくれ誠実にやり取りをしてくれるケースが多いように思います。
②社長室
社長室にはやはり情報がたくさんあります。例えば書籍。どんな本を読んでいるかで考え方の傾向が分かります。想いを大切に考えている人か専門知識か、時事トレンドかなど。また社長の机の上には何があるか。やはりお金がある企業は、社長自身の整理整頓がしっかりされているように思います。
様々な情報から相手を知る
多くの情報を得ることができれば、営業相手をよりリアルにイメージすることができます。そこであなたの営業面談は上手く行くでしょうか。どんなことを聞かれるでしょうか。何に関心を持っているでしょうか。シミュレーションしてみましょう。
このプロファイリングし、シミュレートすることを繰り返すことで、想定通りの営業面談ができる回数が増えることでしょう。